診療の方針
原則その一 生活のペースを緩めること
患者様の症状にもよりますが、基本的には「だらだらする、ゆっくり過ごすこと」が治療の最重要項目になります。
緩め方の相談にのります
ストレスから離れ、仕事や活動ですり減ってしまった心身の疲れを回復することが休養の最初の目標です。
「働かなければならない、3食しっかりと食べなければならない、きちんと寝なくてはならない」といった観念にとらわれすぎず、とにかく自分のペースでゆっくり過ごして頂くことが治療への第一歩となります。
どうしても休めないときは
重要な仕事を任されていてお仕事を離れるのがなかなか難しい、周囲からのプレッシャーから仕事を休むことに抵抗がある… といったケースもあるかと思います。
次の原則でも触れますが、休みにくい時でも制度や手続きを利用して休める状況を作ることが、産業医資格をもった医師の得意とするところです。
また、仕事を続けたままでなんとか症状を緩和させたいという患者様も多くいらっしゃいます。
例えば業務に支障が出にくいように副作用が比較的少ない処方からお薬を試していただく、睡眠や運動などの生活習慣へのアドバイスを行うなど、その人に合わせたオーダーメイド診療によって患者様を支援させていただきます。
原則その二 診断書などを用いてストレスとの距離を作る
患者様の中には、「休んでしまった自分を責める」という心理に陥ってしまう方も多くいらっしゃいます。
そこで、休職診断書などを活用して「正々堂々と休む」ことで、社会的なストレスや心理的なプレッシャーから離れてしまうのが良いケースもあります。
休職診断書発行までの流れ
障害や疾患の診断があり、休職が必要であると判断した際、休職診断書を発行させていただき、手続きを進めることになります。
上司や人事担当者に診断書を提出していただき、休職について具体的な相談を進めます。
出社すること自体がつらいという場合には、電話やメールなどでコミュニケーションをとって頂いてもかまいません。
患者様にとって負担が少ない連絡の方法についても、一緒に考えさせていただきます。
診断書には「一定の期間の休養が必要である」という旨を書く場合がほとんどです。
実際にどのくらいの期間休職をするかは、診断書に書いた休養期間をもとにして会社側と相談して決めていただきます。
また、休職中の生活保障として、健康保険の傷病手当金という制度を利用することができます。
傷病手当金制度を申請する際にも診断書が必要になりますので、ご相談いただければ専用の診断書を発行いたします。
休職後の過ごし方
患者様の症状の程度によっては、身体的・精神的・社会的な健康能力を高めるための「積極的休養」の指導を行うこともあります。
自分を見つめたりする時間、好きなことに関わる時間を1日の中につくったり、趣味やスポーツ、ボランティア活動などで休みを積極的に過ごし、周囲との関係や心身の調整を行っていくことが最終的な目標です。
患者様にとってどのような「休養」が必要かを適切に判断し、段階に応じたお休みのアドバイスをさせていただきます。
原則その三 残った症状に対してこころのお薬の調整を行う
上記のように生活のペースを緩めたり、ストレスから離れてしまっても症状が続く、つらい状態が消えないといった場合に、漢方薬・抗不安薬・抗うつ薬・睡眠薬などを用いて調整を行うことをご提案いたします。
また、苦痛を和らげることが急務である、症状が強いと判断される場合も、お薬によって症状を緩和させていきます。
確かに薬物療法は特定の症状に対して有効性が高いものですが、メンタルの回復にはストレスの原因を根本的に取り除くことが必須といえます。
治療の選択について
患者様ひとりひとりに合わせたオーダーメイド診療が当院の強みです。
以下のような治療内容を組み合わて提供いたします。
- 精神療法(医師による)
- カウンセリング(心理士による)
- 薬物療法
- 環境調整(診断書を作成、家族面談、職場面談)
診療にあたっては、ご本人の困っていること(症状)、原因(原因が無い場合もあります)、患者様の人となり、生活史などを総合的に聴取させていただきます。
そのうえで適切な治療方法を組み合わせることが、患者様の回復や社会復帰のための近道になると考えております。
メンタルドクターは『マラソンランナーの伴走者』
人生はよくマラソンに例えられます。コースの道のりも、ゴールまでの距離も人それぞれですが、それが長いコースであることは間違いありません。
自分のペースを知る、長所・短所を知ることによって、痛みが減り、より快適に楽しく走っていくことができるようになります。
また、長いコースを安全に走り続けるには、焦りや無理は禁物です。
時には励ましたり、時には休息を促したりして、患者様がご自分のペースを掴めるように支援いたします。
休息を指示する場合
「無理をしているな」と判断した場合は休息を促したり、レース自体の棄権を指示します。
このコースしか無い!という思い込みがあっても、実は別のコースもある、実は人と競う必要はない、休息しても大丈夫だと安心していただくことが重要であると考えております。
走りを応援するとき
まだ休職を要するほどではないと判断する場合や、患者様がまだレースを続行したいと強く希望される場合もございます。
患者様のお話をよく聞かせていただいた上で、「ストレスのやり過ごし方」、「気持ちの切り替え方」、「負担の少ないお薬や治療の方法」など、具体的な対策とともに患者様の走りを励ますこともあります。