ADHD(注意欠如・多動性障害)
ADHD(注意欠如・多動症)は、不注意、多動性、衝動性といった特徴がみられる発達特性のひとつです。子どもの頃から傾向がある場合が多い一方で、大人になってから仕事や生活の中で困りごとが増え、「自分はADHDかもしれない」と気づく方も少なくありません。
ADHDとは
ADHDは、米国精神医学会の診断基準であるDSM-5では、不注意、多動性、衝動性という3つの主な特徴によって定義される神経発達症群のひとつです。症状の現れ方には個人差があり、不注意が目立つ方もいれば、多動性や衝動性が強く出る方もいます。
大人のADHDでは、子どもの頃のような目立つ落ち着きのなさよりも、仕事上のミス、時間管理の難しさ、優先順位づけの苦手さ、忘れ物、対人場面での衝動的な反応などとして表れることがあります。そのため、社会人になってから困りごとが増え、初めて受診につながる方も少なくありません。こうした特徴は、単なる性格や努力不足として誤解されやすいものですが、実際には本人も「ちゃんとやりたいのにうまくいかない」と強く悩んでいることが少なくありません。場面によっては不安や落ち込み、自信の低下につながることもあります。
仕事で起こりやすい困りごと
ADHDの特性は、働き始めてから目立つことがあります。学生時代までは何とかこなせていたことでも、社会人になると複数の業務を並行して進める、締切を守る、報連相を行う、優先順位を判断するなどの場面が増えるため、困りごとが表面化しやすくなります。
- 仕事のミスが多く、同じことを何度も注意される
- タスク管理が苦手で、何から手をつければよいかわからなくなる
- 締切直前まで取りかかれず、業務が間に合わない
- 会議や指示の内容をうまく整理できない
- メール返信や事務処理を後回しにしてしまう
- 思ったことをそのまま言ってしまい、人間関係がぎくしゃくする
- 職場で注意されることが増え、自信をなくしている
このような状態が続くと、「自分は仕事に向いていないのではないか」「努力が足りないだけではないか」と感じてしまうこともあります。けれども、背景にADHDの特性が関係している場合には、対策の立て方が変わってきます。

原因・背景
ADHDは、遺伝的な要因や脳機能の特性、環境要因などが複合して関わると考えられています。注意の調整や行動のコントロール、報酬の感じ方、時間の見通しなどに関わる脳の働き方が影響している可能性が指摘されています。
また、ADHDの特性そのものに加えて、仕事上の失敗体験や対人関係のストレスが積み重なることで、不安や抑うつ、自信の低下などを伴うこともあります。現在の困りごとだけでなく、これまでの経過や背景も含めて丁寧にみていくことが大切です。
診断について
ADHDの診断では、症状の有無だけでなく、いつ頃からみられていたか、学校・家庭・職場など複数の場面でみられるか、日常生活や社会生活にどの程度影響しているかを総合的に評価します。
大人の場合は、仕事のしづらさや人間関係の困りごとがきっかけで受診されることが多いため、現在の状況だけでなく子どもの頃からの傾向も含めて確認します。また、不安症状や抑うつ症状、自閉スペクトラム症(ASD)など、併存しやすい状態についても丁寧に確認することが重要です。必要に応じて心理検査や評価尺度などを用いながら、特性の把握を進めていきます。
もしかしてADHDかもしれない、仕事で同じような困りごとが続いていると感じている方は、一度ご相談ください。
治療・対策について
ADHDへの対応は、症状の強さや生活への影響に応じて、環境調整、心理的サポート、薬物療法などを組み合わせて行います。大切なのは、ご本人の特性を理解し、日常生活や仕事の中で困りごとを減らしていくことです。症状そのものだけでなく、仕事上の困りごとや対人関係の悩みも含めて、無理の少ない方法を一緒に考えていきます。
特性の理解と環境調整
まず大切なのは、ご自身の特性を知ることです。忘れやすい、段取りが苦手、刺激に気を取られやすいなどの特徴を把握することで、対策を立てやすくなります。メモやリマインダーを活用する、作業手順を見える化する、仕事を小さな工程に分けるなど、日常の工夫が役立つことがあります。
カウンセリング
ADHDのある方は、失敗体験の積み重ねから自信をなくしていたり、仕事や人間関係に強いストレスを抱えていたりすることがあります。カウンセリングでは、困りごとの整理や対処法の検討を行いながら、必要に応じてコミュニケーションの工夫や自己理解を深めていきます。自分の特性を理解し、無理の少ない対応を見つけていくことが大切です。
薬物療法
必要に応じて、医師の判断のもとで薬物療法を行うことがあります。ADHDに用いられる治療薬としては、コンサータやストラテラなどがあります。薬によって不注意や衝動性、多動性などの症状がやわらぎ、生活や仕事が進めやすくなることがあります。一方で、薬だけで全ての困りごとが解決するわけではないため、環境調整や心理的サポートとあわせて進めていくことが大切です。
薬の副作用について
薬の効果や副作用の出方には個人差があります。たとえば、食欲の低下、寝つきにくさ、吐き気、頭痛、眠気などがみられることがあります。不安が強い方や体調面で気になることがある方では、薬の選び方を慎重に検討することもあります。服用中に気になる症状が出た場合は、自己判断で続けたり中止したりせず、診察時にご相談ください。体調を確認しながら、無理のない形で調整していきます。
働きながらできる工夫
- やることをメモやアプリで見える化する
- 仕事を小さな工程に分けて進める
- 締切より前に中間目標を作る
- 確認作業の時間をあらかじめ確保する
- 作業しやすい順序を決めてルーティン化する
すぐにすべてを変えようとするのではなく、自分に合う工夫を少しずつ見つけていくことが大切です。周囲に理解者がいると、働きやすさにつながることもあります。
相談の大切さ
ADHDの特性は周囲から見えにくく、「努力が足りないだけ」と受け止めてしまう方も少なくありません。しかし、特性を理解し適切に対応することで、仕事や生活のしづらさが和らぐことがあります。
仕事のミスが多い、段取りが苦手、締切に追われやすい、人間関係で困りやすい、職場で注意されることが増えてつらいなどのお悩みが続いている場合には、一人で抱え込まずご相談ください。自分の特性を知ることは、働き方や生活を整えていく第一歩になります。
参考文献
齊藤万比古,渡部京太(編):注意欠如・多動性障害(ADHD)診断・治療ガイドライン.第3版,じほう.2008.
中西葉子,飯田順三:注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害.神庭重信(総編集),神尾陽子(編集):DSM-5を読み解く 1.中山書店,2014.
根來秀樹:落ち着きのない子どもをどのように診るか-ADHDを中心に.青木省三,村上伸治(編集):専門医から学ぶ児童・青年期患者の診方と対応.医学書院,2012.
※本ページは医学的知見および関連資料をもとに患者さん向けに再構成しています。実際の診断や治療は症状や生活状況に応じて個別に判断されます。
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